追記 ・(2019年6月14日)56日後の状況
追記 ・(2019年8月10日)5月以降にヘゴ着けを作った場合のご留意事項及び113日後の状況
追記 ・(2020年5月28日)ヘゴ着けラン作製例の1年39日後の状況
追記 ・(2021年6月18日)ヘゴ着けラン作製2年後の開花状況
追記 ・(2021年8月28日)ヘゴ着けラン作製2年後の修整作業
追記 ・(2022年6月12日撮影)ヘゴ着けラン作製3年後の開花状況
左はヘゴ着けのミニカトレア、右はヘゴ着けのデンドロビウムです。
ミニカトレアはヘゴに着けて3,4年、デンドロビウムは4,5年が経過しています。
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ヘゴ着けランの作製例 (フウラン・富貴蘭)2019年4月19日作製
吊り下げタイプでヘゴ材にフウラン・富貴蘭を着ける作り方を写真でご説明いたします。
フウランは1本立ちのバラ株を使い、富貴蘭は当園交配品種「淀ノ海」の1本立ちを使います。
株立ちのランを使った場合は、着けた後、短い年数で風情が出てきやすいのですが、1〜2,3本立ちのバラ株のほうが、着ける作業は容易です。
ヘゴ着けの作製はとても簡単なため、どなたにもお試しいただきたいと思います。
着ける材料は、ヘゴの他にも庭木・コルク・流木等ありますが、着け方に変わりはありません。
フウランは1本立ち4株で、そのうち1本に子芽1本が付いています。
葉長は10〜12cmの大きさで、長年植え替えていないため密植状態により下葉が落ちています。
木が大型のため樹勢はあると思われます。
淀ノ海の1本立ち2株です。
1本は幅約10cm、高さ約6.5cm(葉のある部分)で、もう1本は幅約10cm、高さ約7cm(同上)です。
株立ちだったものが、経年により根元で分離して外れた株です。
こちらも長年植え替えていないため密植状態により下葉が落ちています。
根の本数も少な目ですが、3本以上あれば問題はないと思います。
ヘゴ材は切断面に角がある場合は木工ヤスリ等で角の面取りをします。
ドリルで穴を開け、吊るす針金を通してフックを作ります。
写真右側のヘゴにフウランを着け、左側のヘゴに淀ノ海を着けます。
ヘゴの大きさは、フウランのものが台形状で、幅約6cm、厚さ約2.5〜4.5cm、長さ約21.5cmです。
淀ノ海のものは三角柱形状で、約5×5.5×4.5cm、長さ約21.5cmです。
ヘゴ表面の細かな筋は、シダ植物のヘゴの根が層になって表面を覆った維管束で、かなり堅く、切断面等がささくれている場合があるため、作業には手袋が必要です。
フウラン4株を寄せてヘゴ材に乗せ、株の向きや寄せ方を決めます。
着ける位置はヘゴ材とランの大きさから高さを見計らいます。
茎の最上部にある根の更に上から新根が出ますので、その位置をヘゴのどの辺に持っていくか考慮します。
ランの茎の向きは左右に葉が広がる形となりますが、重なり具合を調整します。
下葉が枯れ上がった茎、その中で最も大きな木を後ろ側へ持っていくようにして、子芽はできるだけ前面に配置します。
ヘゴ材の幅が狭い場合は、根元を横一列に着けるより互いに上下へずらして着けます。
バラ株の場合は、茎が重ならないように着けることができますが、株立ちの場合はどの面をヘゴに接して着けるか決めます。
株立ちの場合は株元をかなり押さえつけますが、その場合も、できるだけ株元を分離しないように注意します。
ヘゴ材に着ける位置を決めたらビニール被覆針金(20番線)で固定します。
針金で縛る位置は、株元が効率よく押さえられて、株元をヘゴに密着できる位置とします。
かなり強く押さえてもよく、根が挟まっても切断しなければよいです。
大きな株を着ける場合は、針金を複数本使うこともあります。
針金は両端部を交差させた状態で引張り、両端部を180度ひねるのみで止まります。
(斜め横から撮影)
新根が出てすぐにヘゴを捉え、茎がヘゴに沿うように密着させて張り付くのが理想的です。
茎がヘゴ面から浮いたりして離れた場合は、再度縛りなおして新根の発生と根が張り付くのを待ちます。
新根の発生は、株1本につき1,2本ですが、翌年の発根時期まで待たされることもよくあります。
淀ノ海の株元を針金で固定した状況です。
ほとんど枯れて黒っぽくなった根も多少の機能が残っている場合も考えられるので、できれば切らずに付けておきます。
本品は短い根ですが、長い根があった場合も切らずに巻きつけておきます。
新根が出る位置のすぐ下くらいの位置に針金を回して縛ります。
(斜め横から撮影)
針金は何本使っても支障ありません。
針金のビニール被覆に傷をつけると、そこから発錆するのでなるべく傷をつけないように作業します。
針金は被覆が破れて発錆しても2年程度は強度を保ちます。
古根の先端からも新根が伸長を始めるので、古根は四方に広げてビニール紐でヘゴ材に沿わせて固定します。
根を処理する作業は新根の動きだす4月末(静岡県浜松市の場合)までが最適期ですが、根先に注意すればいつでも行えます。
ヘゴに着ける作業も時期を問わず行えますが、適期でない場合は、着けてから春の活動期までの管理に注意が必要です。
フウランの古根をビニール紐で固定した状態です。
写真中央部の2本のように下葉が枯れ上がった茎から発根することを期待して、その部分を茎に沿わせるようにビニール紐で軽く縛ります。
枯れ上がった茎部分が長く、その部分に根がないものの場合、そこから発根を促すために、茎に水苔を巻いて被覆する方法もあります。
枯れ上がった茎の根のない部分が長い株でも、葉が多く付いている株の場合は、茎をヘゴ材に沿わせるのみで発根が期待できる場合もあります。
現在ある根はヘゴに張り付きませんが、多くの根は古根の先端から再度伸び出しますので、古根を広げてヘゴに巻きつけ、ビニール紐で適度に押さえつけて縛ります。
側面から見た状態です。
(斜め横から撮影)
水やり
小さなヘゴ着けの場合は、バケツに水を汲み、全体を10秒間程度沈めると早く効率的にかん水できます。
ヘゴ材の維管束の隙間にも水圧により水を十分含ませることができます。
シャワーノズルでかん水する場合は、頭からヘゴ(裏面にも)・葉・根の全体にたっぷりとかん水します。
晩秋から3月末までは葉と根を濡らすくらいの軽い水掛けが良いです。
ヘゴ着け作製後の水やり頻度は、ヘゴに活着するまで若干多めとします。
その栽培場において、活着品が5〜8日に1回とすれば4〜7日に1回くらいとします。
春〜秋の間は夕方以降の水やりが適しています。
淀ノ海の根は、他の富貴蘭に比較して直線的に伸長することが多く、根がヘゴを捉えにくいように思います。
富貴蘭の中で根がヘゴを捉えやすい品種は、獅子甲竜、青軸鎧通し、阿波針紅等で、ヘゴ着けにしやすい品種です。
新根は折れやすく、折れるだけで切断することがありますので、根先の誘引は9月ごろまで待つようにします。
富貴蘭の無地葉ものは遮光率を70〜80%と高くします。
原種風蘭は徐々に慣らせばかなりの直射光に耐えるようになりますが、葉が黄色味を帯びて小さくなり、花数・花付きも少なくなります。
原種風蘭でも夏は30〜50%程度の遮光をします。
茎を密着させるといっても、写真右側の株のように若干の隙間はあっても構いません。
株がぐらつくことがないように、動くようであれば更に針金を引っ張って固定します。
ビニール紐も水分保持に多少の影響があると思いますが、高温時の蒸れ等を考慮すると最小限の使用量で良いと思います。
ヘゴ着け作製後の1年間ほどは、他の風蘭・富貴蘭を置いてある場所の中で暗めな場所に置くようにします。
ヘゴ着けランを作った後の管理
ランの新根がヘゴ材を捉えますと、安住の地を得たかのように株が活着し、年月を重ねるとともに密着度を増して定着性がより高まります。
姿形も自ずと修整し、全葉が光合成できるような自然形を自ら整えます。
乾燥に対しては自らの備え持つ対応能力を発揮して、野生にあるような性質を見せてくれます。
ヘゴ着けランは自然の中に自生している形に戻るわけですが、管理する人はその状況を想定して置き場所と採光を考慮してください。
春〜晩秋までは風の通る場所が適しますが、夏の蒸れに留意します。
高温にも比較的強いのですが、通風の悪い場所では、できれば温度サーモスタットを介した扇風機を置くと良いです。
年間を通して直射日光を避け、明るい日陰(品種によって異なりますが、冬40〜50%、春〜秋60〜70%遮光)程度の遮光が良いです。
なお、75%遮光は、50%の遮光ネットを2枚重ねた遮光となります。
水やりに関しては、ヘゴに着けた最初の1〜2年間は若干多めで構いませんが、やり過ぎは根の伸長を妨げ、活着しにくくなります。
詳しくは「ヘゴ着けラン」をご覧ください。
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作製から56日後の状況
花茎1本が開花中で、新根も数本出てきました。
花は、これまで木に蓄えた力で伸びて開花しているので、咲かせても支障ありません。
厳密に言えば、花を咲かすエネルギーを消費しますが、木が大きくて樹勢があれば、根や葉の繰り出し・伸長に影響を及ぼすことはありません。
ただし、小木に付いた花芽や咲いた後に受精した花(1花茎の花の中で一段と早く黄変し、子房が膨らみます。)は、早めに取ります。
数本の発根があり、伸長中です。
ヘゴ材の方向へ伸びてくれれば理想的ですが、新根の本数の3分の2以上は空中へ向かって出ると言っても良いほどです。
新根が10cm以上ほどになれば、慎重に曲げることもできますので、根先を縛ってあるヒモや古根の隙間に差し込んでおけば、ヘゴを捉える可能性が高まります。
また、新根を折らないようにヒモで縛りなおすこともできると思います。
当園ではこのような誘引は行っていませんが、確実に形良く着ける方法だと思います。
現在のところ、古根の先端から再び伸び出す動きはなく、ヘゴに着けた当初は最も古い根が枯れたりもしますが、むき出しになった根がその環境になじむまでの期間及び発根と伸長にエネルギーを使っていることから、あまり心配することはありません。
水苔植えから株を取り出す際及びヘゴに着ける際等に根を傷めたり、ヘゴに着けた当初の環境の変化等により、下葉を1,2枚落とすことがあります。
多少の落葉は仕方ありませんが、ヘゴ着け後の数箇月間、遮光率を上げることが有効だと思います。
枯れて針金状になった根は切り取って構いませんが、針金状になった根の先方に生きている根が付いていることもあり、外見上では判断できない場合もあります。
針金とヒモを外せる時まで着けたままが良いと思います。
淀ノ海は1本立ちでも木が大きくて力があり、草体の割に発根が多いようです。
発根数が多くてもヘゴを捉える根はわずかです。
ほとんどの根が空中へ向かって伸びており、淀ノ海の根は太いために曲げにくく、誘引も難しいと思われます。
生育上はヘゴを捉えても捉えなくてもさほどの差はないように思います。
ヘゴを捉えないと株がヘゴに固着せず、活着したとは言えないので、ビニール被覆針金が取り外せません。
株によっては大きな株であっても4,5年経過して活着しないものもありますが、そのような株でも2年以上経過すれば枯れるということはありません。
写真中央に写っている茎の上方から出た新根1本が茎から出た直近でヘゴを捉えています。
このような根が理想的で、一旦ヘゴに張り付くと、かなり先までヘゴから離れることなく張り付いて伸びていきます。
もう片方の淀ノ海も同じように新根1本がヘゴを捉えています。
数本立ちの株立ちを着けた場合は、3,4本の根がヘゴを捉えれば株がヘゴに固定されて活着となります。
新根の先端は濡れた状態で固形物に貼り着くばかりではなく、大半の時間は乾いている固形物に貼り着きつつ伸びていきます。
ヘゴが乾いているからといって、水のやり過ぎは根の伸長を妨げます。
5月以降にヘゴ着けを作った場合のご留意事項
ヘゴ着けランを作る最適期は3〜5月ですが、その時季を外しても作ることはできます。 来春の根出し時期までの管理について 冬の管理 1〜2年以上経過して活着した後の管理 作製から113日後の状況
作製から1年39日後の状況(2020年5月28日) ヘゴ材下端から長く下方へ伸びた根は、写真のようにヘゴの裏側を回して先端を上方へ向けて紐で縛り、ヘゴ材を捉えさせるように誘引しても良いです。 富貴蘭の豆葉品種、淀ノ海の1年39日後の状況です。
作製から2年2箇月後の状況(2021年6月18日) 作製から2年4箇月が過ぎ、修整を行いました。(2021年8月28日) 淀ノ海の茎の上部から発根してヘゴを捉えていますが、茎をヘゴに密着させて縛ると密着した部分からの発根は期待できず、悩ましいところです。 根をヘゴに沿わせた状態で紐を縛りなおしました。 誘引する根の長さが写真くらいだと都合よいのですが、長年放置しておくと根が1m以上にも伸び、それをヘゴに巻き付けるには縦方向にヘゴを巻いても2周以上になることがあります。
最適期に作った場合は、ランの発根時期が作製直後となって活着が早まります。
2018年8月12日に当園で展示用にする目的で、ナラの枝張りのある樹皮付き原木4本を使ってフウランを着けてみました。(注:樹皮のある枯れ木は、いずれ樹皮が剥離します。)
現在、2本を委託販売先で展示し、1本が当園に残っており、その状況は今年の花だより7月分末尾に掲示してあります。
作った当初は真夏の時期であり、枯れるかと思いましたが、かなり暗い棚下に置き、水やりは他のランと同様に1週間に1回でした。
温室フレーム内で作製したので、湿度の保持には多少良かったかも知れません。
今年発根した根は、着生材を捉える新根が多く見られたので展示に使うことができました。
ヘゴ着けは最適期以外にも作ることができますが、活着まで若干の配慮が必要と思います。
来春の活動期まで根の伸長等、ほとんど生長の変化は見られませんので、少しでも湿度を保てる場所に置きます。
(例 西陽を避け、周りに樹木がある場所。通気性はあっても直接強い風の当たらない場所等)
梅雨明け後から11月末までは、60〜70%(富貴蘭75〜85%)とやや暗めの遮光とします。
庭木着けで遮光率が不足する場合は、株からなるべく離れた位置に遮光ネットを設けてください。
(例 遮光率65%とは遮光ネット50%+30%の二重張り・遮光率75%とは遮光ネット50%の二重張りになります。)
水やりは3〜5日に1回、夕方から夜間の水やりが適します。(水やり間隔で、水のやり過ぎは禁物です。)
庭木着けで降雨があって濡れた場合(少々の雨で濡れないこともあります。)、雨がやんでから3〜5日後に水やりします。
ランはほとんど休眠しています。
遮光は40〜50%(富貴蘭60%程度)と、若干明るめの遮光で良いです。
ヘゴ着けランの12月〜3月は、屋根下等の日光が当たらない無暖房の日陰に置き、1週間に1回軽く水やりします。
庭木着けは20〜30%の遮光が適しますので、落葉樹の場合は防風・防寒の効果も期待して遮光ネットで株を覆うことも有効です。
遮光率はヘゴ着けの場合、4〜11月は40〜50%(富貴蘭75%程度)の遮光とします。
水やり間隔は栽培する場所の環境により適宜変更しますが、庭木着けの場合は晴天続きの場合のみ水やりすれば良いです。(庭木着けで活着すれば、2週間程度降雨がなくても支障ありません。)
2019年4月19日に作製してから113日後の8月10日の状況です。
ヘゴ着けしてから発根した根もある程度の長さとなり、空中へ向かっていた根先をビニール紐でヘゴ材に沿うように縛りなおしました。
真夏になるとフウランの根は一休止となりますが、その頃には新根の誘導も少しできるようになります。
空中に出ていても支障のない根を誘導するので、根の出ている付け根を折らないように、無理に曲げないように慎重に作業します。
縛りなおさなくても、根先を紐や古根の間に差し込んで、根先をヘゴ材の方へ向かすことが出来ればそれで良いです。
空中で伸びて白くなった根の部分は、その後どうやっても貼りつかせることはできません。
着けた当時と比較すると、ほとんどの根が枯れて針金状になっていますが、新根が茎1本当たり1〜2本出ていれば大丈夫です。
ヘゴに着ける前の水苔植えの状態では枯れずに残っていた根も、ヘゴに着けると最初の1,2年で枯れるものがよく見られます。
枯れた根を除去すると根の量が寂しくなりますが、新しくヘゴに着いた根は4,5年くらい持つと思います。
ヘゴが沢山の根で覆われるまでには長年月掛かりますが、気長に育てることが良いと思います。
根先はまだ伸長を継続していますが、伸長の速度は極めて遅くなっています。
淀ノ海の方は、縛ってあるビニール紐はそのままとして、新たにビニール紐で縛りました。
ヘゴ材がビニール紐で覆われてしまうのは考えものですが、手っ取り早い方法です。
茎からの長さが短い新根は、不用意に曲げると茎との付け根部分で折れてしまうおそれがあります。
新根がヘゴ材の上で交差して伸びています。
新根の先端の緑色部分もずいぶんと小さくなり、春の勢いは見られません。
もうじき伸長を止めると思いますが、その後は春までほとんどこの状態で過ごしますので、この状態を保つように管理します。
ヘゴ材の維管束が緻密に重なっていない部分では、ランの根が維管束の中へ潜り込むことがあります。
維管束の目の粗いヘゴ材では良く見られます。
フウランの根の伸長も止まり出して、これから来春までは目に見える変化がなくなります。
秋に涼しくなると伸長を始める根もありますが、これからも目には見えない程度の葉の生長等が続きますので、遮光や水やりの管理を継続していきます。
長年ラン等を栽培してきましたが、フウラン・富貴蘭の栽培では、特に遮光加減が重要と思います。
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2019年4月19日に作製してから1年39日後の5月28日の状況です。
フウランは作製した時とほぼ同じ状況です。
正確な検証はしてありませんが、新葉が1,2枚出て下葉が1〜3枚落ちたくらいでしょうか。
着けたとき水分を含んで太かった根は、茎の下方にある根が枯れて黒変し、針金のようになっています。
4本のうち1本の茎につぼみが付いて伸長しています。
ヘゴに着けた後に伸びた根は、8月にビニール紐で縛ったにも関わらず、あまりヘゴを捉えることなく空中へ伸びています。
ヘゴ下端部まで伸びた根は、若干ヘゴ材の中心部方向へ曲がり、水がヘゴ材を伝わって滴り落ちる方向へ伸びていくように見えます。
ヘゴ着けの中にはヘゴ底面を伝って巻くように伸び、裏側から上方へとヘゴ表面に貼りついて伸びていく根もあります。
ビニール被覆針金・ビニール紐・枯れた根を除去した状況です。
左端のフウランの茎は、1本の根がヘゴを捉えていますが、上部がぐらつくために再度ビニール被覆針金で縛りなおしました。
針金は2,3年、若しくはそれ以上取り外さなくても特に支障ありません。
横側から見た状況です。
枯れた根が多く、針金状の根を取り除くと、残った白い根はほんの少しです。
残った白い根は茎1本当たり1〜3本程度です。
ある程度幅の広いビニール紐で縛ったため、水分の保持効果はあったかも知れませんが、根出し等に影響があったかどうかは分かりません。
空中へ伸びた根、ヘゴ下端部から下方へ伸びた根をヘゴ材に沿わせて再度ビニール紐で縛りなおしました。
こういう修整をこまめに繰り返すと良いのですが、手が回らないのが現状です。
昨年中の根の伸長により、ある程度ヘゴに活着し、今後枯れる恐れはない状況です。
フウランにとっては鉢植えから大きな環境変化ですが、自生状態の本来の姿に戻ったということでもあり、これから野性味(ヘゴ材に人間の感覚で取り付けられていたものが、活着とともに自ら葉の向き、形、茎の曲がり等を、環境に合わせて変えていきます。)を現わしていくことと思います。
採光を多くし、風当たりの強い場所に置き、水やりを少なくすれば、草体は現在の写真の三分の一くらいまで縮小します。
ヘゴ着けランをどこに吊るすかということは、フウランにとって鉢植えからヘゴ着けに変える以上の環境変化となります。
置き場所の環境、特に遮光率に十分配慮するようにします。
ヘゴ着けランを見ていると、重力とは逆に上方へ貼り付いて伸びていく根は多くあります。
置き場所の環境と関係しますが、花を多く咲かせるには、草体は大きい方が余力もあります。
肥料は2,000倍程度の薄い液肥を春・秋2回ずつ程度与えます。
屋外へ吊るす場合も4月ごろから11月までは明るい日影(遮光率50〜80%)が良いです。
冬季はそれより明るめ(遮光率30〜70%)で良いです。
ヘゴ着けの場合も水のやり過ぎは根出しや根の伸長の減少になります。
ヘゴ材が完全に乾いて(水を掛けるとと黒くなり、乾くと白っぽくなります。)から2,3日後に水掛けするのが良いです。
ビニール紐を少々巻き過ぎた感があります。
淀ノ海・青玉竜は根出し量が多くて良いのですが、空中へ向かって直線的に伸びる根が多いと感じます。
本品のつぼみが大きくなっていますが、淀ノ海・青玉竜は当園のフウラン・富貴蘭の中では最も開花が早く、5月下旬から咲き出します。
ヘゴ着けは水苔植えに比較すると若干開花は遅いのですが、置き場所(吊るす場所・高さ等)の影響により若干前後します。
2本の茎とも正面から空中へ直線的に伸びた根を無理に下方へ曲げたため、根の付け根が折れたようになっていますが、折れても切断しなければ枯れることはほとんどありません。
急角度に曲げると、見た感じも不自然に見えますので、相当伸びた後に折らない程度に曲げる方が良いです。
ヘゴを捉えた根がヘゴ表面の維管束のわずかな隙間を縫うように上方へ伸び、勢い余って空中へ出てしまったようです。
貼りついた根の接着力は強く、剥がすにはマイナスドライバーが必要です。
根が貼りつくのは自らを樹木に固定するためですが、根と樹皮の間に若干の水分を溜めることや、樹皮の隙間に溜まった水分を吸収する効用もあると思われます。
ビニール被覆針金・ビニール紐を外した状況です。
枯れた根は針金状になっています。
淀ノ海・青玉竜はフウランより根出し量が多く、ヘゴ着けにも適していると言えますが、富貴蘭青物は強い採光に弱く、採光が多いと下葉を落としますので、春〜秋は遮光率70〜80%、冬も50%以上が良いです。
枯れた根を除去した状況です。
ヘゴ材の下端から下方へ伸びた根を、ヘゴ材底面を回して裏側へ誘引して紐で縛った状況です。
この先、先端がヘゴを捉えなくても、ヘゴ材に接触している状況から、ヘゴ材の濡れているうちは水分の吸収もしやすくなります。
今年の開花状況です。
淀ノ海・青玉竜は当園で栽培するフウラン・富貴蘭の中で最も開花が早く、水苔植えのものは5月末に開花します。
(2020年6月9日)
片方の茎に花茎2本が付いています。
一足遅れてフウランの方にも花が咲きました。
(2020年6月20日)
フウラン・富貴蘭をヘゴに着けて1年経過して、活着し始めたところと言えます。
5月ごろから新根が伸長を始めたため、秋にはほぼ活着すると思います。
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2019年4月19日に作製してから2年後の開花状況です。
淀ノ海の開花状況です。
富貴蘭は品種によって根の伸び方にも特徴があり、淀ノ海・青玉竜は発根本数が多く、茎から根が出た方向へ直線的に伸びる性質です。
ヘゴに着けやすい品種の獅子甲龍の根は、自然とヘゴを捉えやすく、ヘゴを根が巻きやすい性質です。
当園交配種の淀ノ海・青玉竜は、開花時期にも特徴があり、当園にある風蘭・富貴蘭の中で一番の早咲きです。
例年、5月25日頃から開花が始まります。
同じ無加温フレーム内でも当園小フレームと大きなフレームでは内容積が違うため、保温効果の高い大きなフレーム内から咲き始めます。
既に花が黄色味を帯びており、開花が終わりかけた状況です。
淀ノ海と並んで吊るしてある風蘭ですが、淀ノ海から少し遅れて開花を始めました。
同じフレーム内で栽培しているヘゴ着けランは、ヘゴを吊るす高さによっても開花時期が異なり、高い位置のものが先に咲き出します。
株が大きければ花を付ける余裕も大きく、輪数も多くなります。
最初は大きな株をヘゴ着けしても、水苔植えに比較すれば保肥力は極めて低いため、適切な液肥等を与えないと年数の経過により株が小さくなるものがあります。
根は小さな隙間を好み、ヘゴを吊下げる針金の穴に入り込むこともあります。
隙間に水分が残留しやすいためだと思います。
ランに比較してヘゴが小さめな場合は、ヘゴから飛び出す根が多くなります。
主に根について形を修整しました。
ヘゴに着けて2年経てば、ほぼ活着している状況となります。
根がヘゴに張り付いた以後は、株の向きや位置を変更することは容易にできませんが、根は自由奔放にヘゴからも飛び出ている状況となります。
このままで後5年・10年何の問題もなく、古くなれば自然に根も下方へ垂れて、さほど違和感も感じさせなくなります。
当園の他のヘゴ着け品は、作製後に根の修整をする作業はほとんど行っていませんが、より早く良い形にするため及び根の吸水を少しでも補助するために、本品は根の形を整える作業を行いました。
また、ヘゴに着ける当初は古い根もなるべく切らずにヘゴに着けますが、1年以上経つと古い根は細い針金状になります。
針金状の根は全て機能をなくして枯れているかと言えば、必ずしもそうとは言えず、時に針金状となった部分より5〜10cmも先端側の根が白く太い根を保っていることがあります。
ヘゴに着ける際も、健全な太い根から下方へ1〜2本までの針金状の根は短くして残しておくのが良いと思います。
水苔植えではかなり古い根も針金状とならずに残っていますが、ヘゴに着けてから1,2年経つと枯れて根皮がブカブカになる根が多いので、そのままにしておくと新根がヘゴに貼りつくのを妨げます。
特にこのような根がヘゴの表面を覆っている場合は、若干機能が残っていることも考慮しつつ切除します。
空中へ伸びている部分の根は、ヘゴに沿わせても張り付くことはありませんが、ヘゴに沿うことで水分保持の助けになります。
古くなって伸長が止まっている根も活動時季が来ると再度先端から伸びだすことがよくあり、その時に先端がヘゴに接していればヘゴを捉える確率が高くなります。
1本の根が何年持つのか詳しく観察してはありませんが、長く伸びた根の節は3〜4箇所あるものがあり、そういう根では伸長を止めてから2〜3回は再伸長を繰り返したということが言えます。
全ての根が再伸長を繰り返す訳ではなく、株の状態により、また同じ株でも一度伸長を止めてそのままという根もあります。
極端に長い根をヘゴに巻き付けると、上下方向に巻いても2周以上になる場合もあり、そうした状況で先端が張り付くと不自然になります。
株にとっては悪いことではなく、気にしなければ良いのですが、不自然さを避けるには極端に長い根をヘゴ材へ上下方向へ巻いた場合、ヘゴ下端から上端へと巻いて表側に出してから紐で縛る余裕を取って数センチの位置で切るのが良いと思います。
実際にそうやって根を切ったことはないのですが、特にヘゴ着けを作成して年数が経っていない場合は、根が少ない状況のため、根を切らないのが最善です。
また、今年伸びた根は元の方から徐々に固まってきて、8月下旬ともなれば曲げて折れても切断しなくなりますが、固まってくる時期は地方により一概ではないと思いますので、根の扱いにはご留意ください。
修整を行う前の淀ノ海です。
ヘゴを捉えている根が数本あり、株のぐらつきが無ければ針金は除去できますが、写真右側の株の下葉が落ちた部分からの発根がないため、針金を取ると水やり等で株が前方へ傾いてくる恐れがあり、針金はそのままとします。
特に気にならなければ5年以上も縛っておいて支障はありません。
ヘゴ下端から下へ伸びた根も程よい長さですが、更に活着の効果を上げるため、根をヘゴに沿わせて巻き付ける作業を行います。
反対側側面の状況です。
茎とヘゴの間隔を5mmほど空けるのも良い方法かも知れません。
水分保持には密着の方が良いと思われ、当園ではその方法で行っています。
健全な根の量が多いので、根皮がブカブカになった根はほとんど除去しました。
ヘゴの下端ではどうしても根を直角に曲げるため、特に新根は音を出して折れます。
発根直後は伸長の速度が速く、新根が固まっていないために直角に近く曲げると折れて切断します。
地方により一概ではありませんが、8月末くらいになると先端が伸長している根でも元の方はある程度固まってきており、曲げて折れても切断しなくなります。
しかし、新根の先端に近い部分及び先端が伸長を継続している根の先端に近い2,3cmの部分は、折れると切断する可能性がありますので注意します。
根を巻き付ける際は、固まっていない先端に近い部分はできるだけ曲げないで済むようにします。
できればヘゴ垂直面の角をたすき掛けに回すようにすると根の曲げ角度が少なくなります。
フウランの修整前の状況です。
1年前に縛りなおした紐が残っています。
側面の状況です。
春以降伸長した根は夏に伸長を休止するものも多くあります。
この株のように先端がゆっくりと伸長を続けるものもあります。
伸長している根先は柔らかいので、傷つけないように作業を行います。
やや大型のフウランを着けたため、新根は旺盛に伸びた状態です。
着けた当初から下葉の落ちた株でしたが、茎のかなり上の部分から発根しており、来年はさらに上部からの発根を期待します。
上から発根した根はヘゴを捉えていないため、針金は外さない方が良い状態です。
枯れてブカブカになった根はほとんど除去しました。
フウランの根をヘゴに沿わせて縛りなおした状態です。
1本の茎に年間1,2本しか出さない根が空中に向かって出ると、その年の株はヘゴに活着しません。
根がヘゴに張り付かなくても、それで株が枯れるということはなく、活着しない状態で5年間以上も縛られている株もたまにあります。
そういう株は、ヘゴ材との相性があるかどうか分かりませんが、ヘゴ材を交換してヘゴ材の大きさ等を替えてみるのも良いかもしれません。
フウランの側面の状況です。
このように根を誘引しない株でも、ヘゴの下端でUターンした根がヘゴの裏面を上方へ向かって伸長し、張り付いていくことは珍しくありません。
ヘゴ材に張り付いていない根を沿わせることは、張り付いた状態に比較すればごくわずかと言えますが、水分の保持に有効かと思います。
根の伸長期は、古い根の先端が再度伸びだしますので、そこにヘゴがあれば容易にヘゴに貼りつくことができます。
根が少ない株ではそのように巻くこともありますが、観賞上は不自然さが出てしまいます。
ヘゴ着けランもある程度数量が増えると手が回らず、ランが自由奔放に根を繁茂することになりますが、大多数は姿を見られないほど崩すことはありません。
大きく姿を乱したものを修整するのみで良く、管理するランが多くなければ細部にもこだわって修整してやるのは良いことと思います。
作製から3年2箇月が過ぎた花の状況です。(2022年6月12日撮影)
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